趣味の盆蚕

「しゅみのぼんかいこ」とは、盆栽を楽しむように小規模に養蚕を楽しむという意味で、ブログ筆者の造語です。略称は「ぼんさん」

8月13日:孵化と掃き立て

 お蚕さんの種が孵化(ふか)しました。

 孵化というのは卵から生まれることです。

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 孵化したばかりのお蚕さんは、黒くて毛が生えています。そのため「毛蚕(けご)」と呼ばれています。

 

 さっそく餌をやりましょう。

 お蚕さんの餌は桑(クワ)の葉です。

 人間がどんなにおいしいと思っても、キャベツやレタスは食べません。

 食べるのは桑の葉だけです。

 

 うちでは桑を庭先で育てています。

 桑には美味しい実がなるので、園芸店で苗を買うことができます。

 自分で育てる以外に公園や土手にはえている場合もあります。

 植木として手入れされている桑はとってはいけませんが、雑草のように勝手にはえてるものが多いので、みつけてとってくることもあります。

 なまの桑ではなく、桑から作った人工飼料を買ってきて与ることもできます。

 どんな餌を与えるかは、飼い始める前に考えておいたほうがいいでしょう。

 (え、そういうことは最初に書け? そうですね、すみません)

 

 今回は自宅で作っている桑の葉をやろうと思います。

 孵化したばかりのお蚕さんには葉を刻んで与えます。

 

 どうして葉を刻むかというと、お蚕さんは葉のはじっこから食べるからだよ、と前に誰かから習った事があるような気がします。生まれたばかりの小さなお蚕が、葉のはじっこをさがしやすいように刻むのだと。

 でも、実際に飼ってみると、毛蚕のうちは葉の真ん中からも食べるんです。

 葉をまるごとあたえても食べると思いますが、葉は乾燥するとまるまってしまい、お蚕をとじこめてしまうようです。

 そうならないように刻んで与えるんじゃないかと勝手に考えていますが、本当はどうなのかよくわかりません。

 

 刻んだ桑の葉に毛蚕を移してやることを「掃き立て」といいます。

 刷毛(はけ)などで掃くようにして、そっと移すからです。

 このやり方もいろいろあって、刷毛で毛蚕を桑の葉に落としてやる方法を前に聞いたような気がするのですが、このやり方だとけっこう大変です。毛蚕は刷毛のほうにしがみついてしまい、なかなか葉っぱに移ってくれません。

 先日、福島県の養蚕を記録した本を読みました。

 その本によると、福島では毛蚕の上に刻んだ桑の葉をのせてやり、毛蚕が桑の葉に移ったところで刷毛で蚕座(さんざ)に移すのだと書いてありました。

 蚕座というのはお蚕を飼う場所のことです。ザルや箱に紙を一枚敷いて、その上で蚕を飼うのです。

 

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 これがうちの毛蚕用の蚕座です。タッパーに画用紙を1枚敷いただけです。

 毛蚕のうちは湿度を保ったほうがいいのでタッパーを使っています。密閉せず、蓋をずらした状態にして、湿気を調節しています。画用紙はしめってくるので1日に1度くらい取り換えます。

 飼い方はいろいろあると思います。どうするのが最適かは、実はよくわかりません。地方ごと、農家ごとにノウハウがあるでしょうし、わたしは自己流でいろいろやってみています。

 

 二齢か三齢くらいまではタッパーで飼っても大丈夫だと思いますが、四齢からはかえって乾かさなければならないので、タッパーに入れつづけてはいけません。

 お蚕さんはデリケートな虫なので、いろいろお世話が大変なのです。

 

 わたしの祖母は群馬で蚕を飼っていました。もうそのころは群馬の養蚕はすたれかけていたので、わざわざ蚕を飼っても、ちょっとしたお小遣い稼ぎにしかならなかったかもしれません。

 昔の養蚕は、農家の貴重な収入源だったと聞きます。そのため、蚕などと呼び捨てにはせず、お蚕さんとか、お蚕さまと、敬称をつけて呼ぶ人が多いです。祖母も「お蚕さん」と呼んでいました。