趣味の盆蚕

「しゅみのぼんかいこ」とは、盆栽を楽しむように小規模に養蚕を楽しむという意味で、ブログ筆者の造語です。略称は「ぼんさん」

精練したり、よりをかけたり…

 前の記事では糸を綛(かせ)にするところまでやったんでしたっけね。

 

  お蚕の糸はセリシンという物質に包まれていて、これが粘着するので繭の形になるんです。糸として利用するには、セリシンを取り除かないといけないんです。そうしないと絹独特のツヤが出ないし、洗うたびにセリシンが溶けだすので、染めても落ちてしまうし、洗って乾かすたびにゴワゴワに固まっちゃったりするわけです。

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 これは、前の記事で綛にしたものを、一度茹でてからぬるま湯で洗って、絞って乾かしたものです。まだまだセリシンが落ち切っていなくて、乾いたらガチガチに固まってしまいました。糸をはがそうとすると、バリバリッと言うような状態です。

 

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 もう一度茹でてみます。ガチガチだった綛が、お湯に入れたとたんに柔らかくなりました。

 

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 生糸からセリシンを取り除く作業のことを精練(せいれん)といいます。

 

http://www.pref.gunma.jp/06/f2210130.html

 群馬県の公式サイトによると、精練にはいくつかの方法があって、セッケン(石鹸?)で洗う、アルカリで処理する、セッケンとアルカリを両方使う、酵素でとかしちゃう、圧力釜みたいなものを使う、の五種類だそうです。

 

 自宅でやるなら、重曹を入れて煮る(アルカリ精練にあたる)のがいいんじゃないかと思うんですけど、今回はお湯だけで煮てみます。どんな出来上がりになるかは、わたしもわかりません(笑)

 

 煮るといっても、グラグラ沸騰させてしまうと糸にダメージがありそうな気がするので、シャトルシェフを使って、糸を入れたら火をとめて保温するようにしました*1。普通の鍋を使うのなら、沸騰させないように弱火で加熱するといいかもしれません。詳しいやり方は養蚕でなく染色関係のサイトを見るといいかもしれないです。精練のことはソーピングともいいます。

 

 数時間保温したあと、またぬるま湯でそーっと洗い流し、軽く絞ります。洗う時に水よりぬるま湯がいいような気がします。温度が下がると固まっちゃうので。ここまでで二度茹でているわけですが、この程度じゃまだまだって感じですね。

 

 でも、ここらでひとまず精練は中断して、糸によりをかけようと思うんです。なんで途中でやめるかっていわれても行き当たりばったりなのでよくわかりません。ホントにすみませんフィーリングだけで作業してて。

 

 糸によりをかけるには、紡ぎ車のようなメカ的な道具もあるのですが、それを購入するような資金がないので、このような道具を自作しました。スピンドルとか紡錘(つむ、ぼうすい)とか言います。

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 こうやってぶら下げて回転させればよりがかかります。

 

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 よりのかかった糸は、こんな感じで巻き取っていくわけです。この作業はチャンスがあったらもうちょっと詳しく書きたいと思います。

 

 この作業をやるのに、糸が綛(かせ)のままだと場所も食うし取り回しがめんどうなので玉にしてやりたいと思うわけです。

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 こういう具合で 2玉並べて、引き合わせてよりをかけたいんです。

 

 しかしここからまた壁にぶちあたる。なんせ安く買えそうなもので作業しているので様々具合が悪いのです。

 

 糸を乾かしてしまうと固まってはがれにくくなるので、湿ったまま作業したいです。ところが、糸は塗れた状態だとのびて、乾いた時にキューッと絞まっちゃうんですよね。前のページにかいた「まきまき」で巻き取ると、毛糸と違って抜けなくなってしまうんです。

 

 いちおう工夫はしてみました。たとえば紙でこんな筒をつくってまきまきにとりつけて、ここに糸を巻いて紙ごと抜いたらどうか。

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 やってみましたが、全然ダメでした。紙も湿ってガッツリ絞まって抜けないのです。普通は糸巻きを複数用意してやるんでしょうが、まきまきの芯は 1個しかありません。どうすりゃいいの?

 

 仕方ないので「まきまきに巻き取ったあと、さらに綛にもどし、もう一度まきまきで玉にする」という、自分でもアホかと突っ込みたくなるような作業をして、どうにか玉を 2個作りました。玉→綛→玉とくりかえせば空気にふれて乾き、くっつかなくなるというわけです。

 

 でも、こんなのまだ序の口でした。むしろ苦労したのはよりをかける作業です。なんせお蚕の糸は良く育った状態ならば1000m以上あるらしいです。わたしが育てたお蚕は餌が足りなかったのか綛くり機の回転で計算したところ700mくらいしかなかったのですが、それでも700mですからね。これをスピンドルで地道によりをかけるわけですから時間がかかるのなんのって、結局 3日くらいかかってしまいました。スローライフは根性です。

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 これを、2玉にわけて引き合わせて、最初にかけたよりと逆方向のよりをかけて、最終的にまた精練すれば完成する、はず。七夕のお供えに間に合うか、なんてこと書きましたが、ぜーんぜん間に合いませんでしたー。

*1:ちなみにこの鍋は普段の料理にも使っています。お蚕は毒ではないので(虫が嫌いでないなら)問題はありません。ただし、煮炊きに使った鍋はきれいに洗ったつもりでも食材のアクが残っているかもしれないので、糸の色に影響する可能性があります。可能なら専用の鍋を作ったほうがいいような気はします。