趣味の盆蚕

「しゅみのぼんかいこ」とは、盆栽を楽しむように小規模に養蚕を楽しむという意味で、ブログ筆者の造語です。略称は「ぼんさん」

フェロモン

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 盆栽みたいにこぢんまり養蚕をたのしむ、なんて書いておきながら話がどんどん濃くなってるような気がする昨今です。まあ、写真だけでも見てってください。

 

 上の写真はメスのお蚕です。成虫になるとこのようにお尻から黄色い袋を出します。ここにフェロモンというものが入っているそうです。そう、これをむんむんさせて殿方を呼び寄せるのですことよ?!

 

 残念ながら人間にはこの臭いがわかりません。でも、お蚕の殿方にはたまらない香りのようです。ある時、窓をあけたままおかいこのメスを観察していたら、窓からジミな色をした蛾が飛び込んできて、メスの近くに陣取って離れません。何度もおっぱらって外に出すのですが、何度やっても戻ってくるのです。よく見たらクワゴのオスでした。クワゴクワコ)はお蚕の原種と言われている野性の昆虫です。

 

 そんなに気になるなら交尾しちゃいなYO!ってなもんで「あとは若い人にお任せして、あたしは奥へ引っ込んでいましょうね、えへへ」としばらく放置してみたんですけど、残念なことに交尾には至らず、クワゴとカイコの混血は生まれませんでした。

 

You can fly!

 クワゴは成虫になれば空を飛べますが、カイコは飛ぶことができません。カイコにもいろんな品種がありますから、たまにほんのちょっと舞い上がるカイコもいるそうですが、まだそういうのに出会ったことがありません。そういえば江戸時代の養蚕書の挿し絵には、たまに飛んでる絵が書いてあります。

 

 いろんな品種を飼ってみたいものです。そのうち群馬の蚕糸技術センターにどんな品種がいるか問い合わせてみようと思っていたら、去年末で県外への蚕種配布をやめてしまったということで涙目なのです。あとはジーンバンクか… あそこ書類多くてめんどくさすぎる >_<

 

 

 

 

ふぞろいな繭たち/江戸時代の養蚕指南書にみえるお蚕の病気

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 元ぐんま黄金の繭です。トイレットペーパーの芯を蔟(まぶし)にすると形のいい繭が出来ますよ、などと前に書いたような気がしますが、ごらんの通りふぞろいでお恥ずかしい限りです。

 

 大きいか小さいかは蔟の形によるかもしれませんが、よく見ると小さくて真ん中がくびれたのも混ざってます。単純に蔟のせいでもなく、先祖返りでくびれ繭になってしまったのか、あるいは気温等の条件によるものなのか、という感じです。

 

繭と蛹(さなぎ)の異常

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 わかりにくいかもしれませんが、このお蚕は粗く糸を吐いたところでやめてしまい、きちんと繭になる前に蛹になってしまいました。中の蛹はたぶん生きていると思います。時々こういうのがいます。原因はよくわかりません。餌の量か気温の関係で絹糸腺が発達しきる前に繭を作る時期になってしまったとか、先天的に異常を持っていたとかじゃないかと想像しています。

 

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 こちらはほとんど糸を吐かずに蛹になろうとしたお蚕です。糸を吐けなかったばかりか、体の変化も不完全だし、脱皮にも失敗しています。尻のほう(右側)はまだ幼虫の時の皮をかぶっています。この状態で死んでるかっていうと、つつくと動くのでまだ生きています。残念ですが成虫にはなれないと思います。

 

改めてお蚕の病気について

http://okaiko.hatenablog.com/entry/2012/11/26/123757

 上記のURLでは、わたしが実際に飼育して見たことのあるお蚕の病気について書きました。

 

 あれから江戸時代の養蚕書を何冊か読んだところ『蚕飼絹篩大成』という1814年に発行された本に以下のような蚕の異常(病気もあれば、そうでないものもまざっている)が記録されていました。細菌やウィルスの知識がなかった時代のものですが、参考になると思うので書いてみます。逐語訳ではありませんので原文を確認したい方は『日本農書全集35』を図書館で探してみてください。そこに掲載されています。

 

デノコリ(出残り)
 卵の中に幼虫の姿が見えているのに孵化せずに死んでしまうものを『蚕飼絹篩大成』ではデノコリと呼んでいます。一度に何百も卵を産むわけですから、そのうちのいくつかは生まれてこないことはごく普通にあることです。

フシダカ(節高)
 昨日までなんともなかったお蚕が節高くなり、全身から白い汁が出る病気です。餌をたべなくなり、そのまま死んでしまいます。伝染すると書いてあります。この病気はまだ見たことがありません。

 『養蚕秘録』という別の本には、獅子休み(最初の脱皮)の頃に節があって水の出る蚕があれば、庭の居起(四度目の脱皮)の時に病気が悪くなると書いてあります。温か過ぎたり寒過ぎたりが原因であるとも書かれています。昔のことなので原因がはっきりせず、ほとんどが暑さ・寒さ・湿気せいにされてることが多いです。伝染病ならば、温度と湿気は発病と無関係ではないと思います。

コシボソ(腰細)
  蚕は、頭が細く、尻が太いのが普通ですが、コシボソは尻が細くなる病気だそうです。この病気になっても蚕は普通に桑をたべ、しばらく生きつづけるそうです が、最終的には縮んで死んでしまいます。『蚕飼絹篩大成』の著者によると、フシダカとコシボソは表裏一体をなす病だというんですが、わたしは後述のヌギサ ゲの一種のような気がしてます。

 「療養桑に酒を振、或は蕺菜(どくだみ)、又は蓬、葱、などを桑に切まぜ、秘術をつくすといへども、腹心の病、治しがたきもの也」と書いてあり、何をしても治らないよ、ということなのですが、蚕の病気を治療するのにこのような方法がとられていたことがわかります。蚕は桑以外食べませんから、こんな方法では病気はなおりませんので念のため。ただし、酒を振るというのは消毒の意味があるかもしれません。餌に酒など振ってはいけませんが、お蚕を飼う道具の消毒になってた可能性はあります。

 

不浄負け・養蚕秘録より

 これは『養蚕秘録』という別の本(やはり江戸時代のもの)に記録されている病気です。お蚕が不浄に負けて赤くなったり、ちぢけて死んでしまう病気だそうです。治療法として「此時は急ぎ桃の葉を火にふすべてよしといふ。又甲州辺は、こくさぎの葉を採り、此汁をもみ出し、少し桑にかけて喰すともいふ。又極上の酒を桑に吹かけ、喰す国もあり」と書いてあり、『蚕飼絹篩大成』のドクダミを桑に切り混ぜろと書いてあるのに通じるものがあります。蚕は桑しか食べないので、そんなことをしても意味はないと思います。ひょっとすると、昔の人は経験から植物の殺菌作用を知っていて、餌のけがれを薬草で浄化しようとしてたのかもしれないですが。

 同じ本の別の箇所に、船休みの頃にちぢけてしまうのは暑気にあたったせいだと書いてあります。

 また、頭が赤くなり桑を食べなくなるのは、稚蚕の頃に暖め過ぎて、暖房の熱気で傷ついたところから病気になるのだとも。

 『養蚕重宝記』にも赤くなる病気の記載があります。後述のヒカリとも関係があるかもしれません。 


ヒカリ(光)
 蚕の頭が光る病気だと書いてあります。光る、というのがどういう状態なのかちょっとわか りません。原因は、日に当たって熱くなった桑を蚕に与えたせいで、蚕が頭痛に悩んでいるのだと『蚕飼絹篩大成』の著者は書いています。ヒカリになるとすぐ に死んでしまうか、死なないまでも繭を作らずに蛹になってしまうそうです。いつまでも繭を作らない蚕は確かにいるのですが、頭が光るという症状はまだ見た ことがありません。

イズ(出ず?)
 「獅子・鷹・船・庭、四度の居起の折ふしに、寝起きをせざる自堕落もの」とあるので、ほかのお蚕と脱皮 のタイミングがあわない(成長が遅れている)蚕のことだと思います。病気というよりは、ほかのお蚕よりも孵化するのが遅かったり、桑をたべそこねて育ちが 悪かったり、ということが考えられます。沢山飼育すると、必ずこういうお蚕に出会います。

ヌギサゲ(衣下げ?)
 脱皮に失敗して、皮が腰のあ たりにくっついたまま脱げない状態です。その状態でも桑を食べますが、糞づまって苦しみながら死んでしまいます。伝染病ではありません。こういうのも沢山 飼うと必ずいくつかいるものです。前述のコシボソは、ひょっとするとヌギサゲと同じものじゃないかと想像しています。

クイヲドリ #クイドヲリの写し間違いかもしれないので、あとで確認します。
  庭休み(四度目の脱皮)をせずに繭になっていまうお蚕のことだそうです。おそらく突然変異ではないかと思われます。現代ではそういう性質のお蚕をかけあわ せて三眠性の品種も作られています。三眠蚕は餌が少なくていいのですが、四眠蚕にくらべれば繭が小さいということです。

タリコ(足り蚕?)
  「放蕩に食をくらひ、飽くまで肥太り、繭を作の時に臨で、惣身膿汁と成、腐り死す。是をタリコといふ」とあります。多食によって出る病気であること、繭を 作る前に発病すること、全身が膿汁になり腐って死ぬという症状をみると、ほかの本では「ナガレコ」と呼ばれている病気がこれだと思います。この病気は現代 でもよく見るもので、それまで元気だったのに、突然頭が緑色に染みてきて、潰れたようになって死んでしまうのです。しかも伝染性があるようで、この病気で 一気に全滅することがあるので要注意です。多食によって発生する、と書いてある本が多いのですが、わたしの経験だと多食になっても風通しをよくしていれば 出にくいので、ウィルスか菌によるものじゃないかと想像しています。

ヤワラ
 幼虫のうちは問題のない蚕が、いざ繭を作ろうとするとうまくいかず、糸ばかりはいて繭の形にならないという状態です。こういうのもたまにいますね。原因はよくわからないのですが、何かの理由で幼虫のうちに絹糸腺が発達しきらなかったとかかなあと、想像しています。

ヒヨットヌケ
  途中まで繭を作っているのに、なぜか抜け出して別のところでまた繭を作ろうとするお蚕です。移動した先でちゃんと繭になる場合もありますが、何度か繰り返 しているうちに吐く糸がなくなって、裸のまま蛹になってしまうことがあります。これもよく見ます。前述のヤワラと同じ症状のような気がします。

ヒラバリ
  分不相応に大きな繭を作ろうとして、結局は糸がつきて繭にならないものだと書いてあります。江戸時代だと、蚕に繭を作らせるのに、今のような区画簇(くか くぞく)ではなくて、藁をたばねて作った藁駄などを使ってるはずですから、たまたま繭造りに適さない大きな隙間に糸をかけてしまうお蚕が出やすかったん じゃないでしょうか。蔟の形は重要です。繭を作るのに適した場所がないと、お蚕は平らな場所でも繭を作り始めますが、糸をかける場所がないのでつぶれたよ うな平たい繭になってしまいます。

シャリコ(舎利蚕)
 蚕が干物のようになって死ぬ病気で舎利蚕と書くそうです。これがなんと中風の薬だそ うで、生薬名は白姜蚕であると書いてあります。白僵蚕(びゃっきょうさん)のことですね。現在でも漢方薬に処方されることがあるようです。生薬の本によく 写真が載っていますが、わたしが飼ったものからこの病気が出たことはありません。

 

煙草の煙にあたり、死んで埃になる病気・養蚕重宝記より

 これまた江戸時代の『養蚕重宝記』という別の本に出てくる病気です。煙草の煙や霜などの寒さにあたって、蚕が死んで埃になる病気だとあります。埃になるというのが前述のシャリコに似ているような気がします。


シミ
 繭の中で死んで腐ってしまうお蚕のことで す。繭から糸をとるには、繭を湯で煮るのですが、その時中で腐っていると繭の湯が濁り、ほかの正常な繭まで汚してしまうと書いてあります。これもよく見る 病気です。おそらく、タリコやナガレコと呼ばれる病気にかかり、繭のなかで発病して死ぬのだと思います。これがまざっていると、繭がよごれるというよりお 湯がクサイですね。タリコやナガレコは死んだ直後はそれほど臭いませんが、時間がたつとどうしても悪臭がします。

ブト
 「繭をつ くりて、五日目か、六日目かに、繭の内より螂蛆出るを蛹(ぶと)といふ。竹木の雫をうけたる桑を喰せば、繭虫に黒子出来、蛹(ぶと)になるよし」とありま す。つまり寄生虫ですね。カイコノウジバエのことでしょう。竹木の雫を受けた桑(つまり濡れた桑)を食べたせいだ、なんてことを書いてありますが、実際に はカイコノウジバエの卵がついた桑を食べたせいです。江戸時代には寄生バエの知識などなかったでしょうに、この病気(寄生虫)が口から入ることは経験でわ かってたようですね。

 

黒むしの害・養蚕秘録より
 これは『養蚕秘録』という江戸時代の別の本に出てくるものですが、関連情報として記載します。稚蚕の頃に(まだ黒っぽくて消しゴムカスのような大きさの頃に)、数ミリ程度の小さな虫が発生して蚕を吸い殺すと書いてあります。蚕の糞を片づけないと発生するとも書かれています。この虫が出たら魚のヒレなどを藁づとに入れて、蚕を飼う部屋の高いところに吊るしておけば、臭いで虫が集まってくるので遠くに捨てに行きなさいとも。ここで蚕を吸い殺すとされている虫がなんなのか、ちょっとわかりませんが、カイコノウジバエならば刺さないはずなので、ヌカカのようなイモムシの体液を吸う虫かもしれません。ヌカカが魚のひれで寄せられるかは疑問ですが。


玉繭
 複数の蚕がひとつの大きな繭を作る現象です。繭をつくる場所が足りないなどの理由で同じ場所に糸をはきはじめてしまうのだと思います。病気ではなさそうです。

 

 

 以上、特にことわりがない場合は『蚕飼絹篩大成』に出てくる病気です。蚕の病気については『養蚕秘録』にもかなり出てくるのですが、それぞれの本で著者が経験のみでものを書いているのと、地方ごとに呼び方が違ったりするので、だんだん分類が面倒になってきたので、今回はやめておきます。今後も養蚕指南系の古典籍を手があいたら読む予定なので、チャンスがあったらもっとつっこんだ病気リスト(江戸時代版)を作ってみようと思います。

 

 なお『養蚕重宝記』に関しては、わたしが影印本から書きおこしたものを、以下でこっそり公開しています。古文書解読はド素人(あ、わたしがやってることは、どれもこれもまるっとすべてド素人の仕事ですからー)なので、間違いだらけだと思いますからあまり信用しないようにお願いします。

http://www.chinjuh.mydns.jp/koten/tyohoki1.htm

羽化・交尾・割愛

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 6月30日、朝見たらこの状態でした。

 

 お蚕の交尾は静かで情熱的です。こうして結合したまま翅をふるわせて、何時間もずっとつながっています。手でひきはがそうとしても、簡単にははなれないほど、固く結びついています。

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 半日くらいほうっておくと勝手に離れることもあるし、何日もつながり続けたまま弱って死んでしまうこともあります。メスが弱ってしまうと卵をとれないので、そうなるまえに引き離してやります。お蚕の腹をそっと持って、ねじるようにしてひっぱると、ぽこっと離れます。これを割愛(かつあい)と言います。しっかり結合している時は、写真のように翅をひっぱるともげそうになるので、腹をそっと持ってねじったほうがいいと思います。

 

 ところで、割愛という言葉には「惜しいと思うものを手放すこと」「不必要な部分を切り捨てること」などの意味があります。もとは養蚕用語だったのが普通の言葉になったとテレビでも紹介されたことがありますし、わたしもそう思っていました。

 

 改めて辞書をひいてみると割愛には「愛着や煩悩を切り捨てる」という意味もあって、古くは鎌倉時代の『沙石集』という仏教説話集にも「割愛出家の沙門(この世への愛着を切り捨てて出家した僧)」というフレーズに出てくるそうです。最初は仏教用語だったのかもしれません。後に交尾中のお蚕を切り離すことを割愛というようになり、やがて一般の言葉として広まって行ったのかな、と思います。

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 交尾中のお蚕を割愛すると、メスはピュッと小便をして、そらからしばらくすると卵を産み始めます。勝手に歩きながらどこへでも産み付けてしまうので、決まった場所で産ませたいなら、ペットボトルかなにかを切ってかぶせてやるとその中だけで卵を産みます。

 

 すっかり卵を産んだメスは、もう餌も食べず、ただ弱って死んで行くだけです。オスも同じです。

 

 前に、産卵を終えたメスと、そのメスと交尾していたオスを一緒にしてみたことがあります。二頭はまた尻で繋がって、いつまでも一緒でした。二日目の朝だったでしょうか、ふと見たらオスがメスの尻にぶらさ がったままハエトリグモにたかられて、ジワジワ食べられていました。もう弱っていて翅をふるわせて追い払う力もないのです。それでもまだ生きていて、決してメスを放そうとしませんでした。生きものの本能とはいえ、なんという愛欲の深さでしょう。昔の人がお蚕を別つのに仏教用語を使った気持ちがわかるような気がしました。

お蚕はどのくらい餌を食べるのか

 これは難しい問題です。検索などして資料をあたっても数字はまちまちだし、何グラムとか言われたって、実際どんな分量なのか想像できなくて当たり前。毎日食べてるご飯だって、お茶わん一杯で何グラムなのか即答できる人は少ないでしょう? それが桑ならなおさらイメージしにくいというものです。

 

 お蚕は、卵から生まれた直後を一齢といいます。最初の脱皮(獅子休み)が済んだら二齢です。次の脱皮(鷹休み)の後で三齢になり、その次の脱皮(舟休み)の後が四齢で、最後の脱皮(庭休み)のあとが五齢です。文章に書くとわかりにくいですね。

 

 一齢〜三齢までは、餌の量も大したことはありません。四齢になると少し食べるようになります。一番食べるのは五齢の頃で、趣味で50頭くらい飼うのであれば、餌で困るのはだいたい五齢からです。

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 これは今朝とった桑です。大きさがわかりやすいように文庫本を置いてみました。これでもイメージしにくいとは思うのですが、ヒントにはなるかなと思います。この量でだいたい100gありました。

 

 これを50頭の五齢蚕にやったとすると……1日分に足りるかなあ。半日分くらいかなあ……って感じです。

 

 お蚕は暖かいと活発になって沢山食べますし、寒いとそうでもないです。そのため、はっきりこのくらいの数字、とも言いにくく、そのつどこのくらいやればいいかなって考えてます。そのため、パキッとこのくらいあれば大丈夫、と断言しにくいのが現状です。

 

 うちでは趣味でお蚕を飼うために桑の栽培もしています。栽培、といっても玄関先に 1株だけこっそり植えてあるのみです。畑を持っているわけではないし、広い庭があるわけでもありません。

 

 桑の木は生長が早いので、地植えにするとぐんぐん育って、2年くらいたつと「えっ!?」と思うような木になります。お蚕50頭なら、庭先に植えた1株の桑くらいでだいたい足りると思います。ただし、鉢植えだとそれほど大きくならないと思うので、何株も育てないといけないかもしれません。

 

 自宅の桑で足りなかった時のために、普段から土手などを歩いて、桑の生えている場所に目をつけておく必要もあります。桑は強い植物なので、鳥などに運ばれた種から自然に生えてきて育っていることがよくあります。そういうのは勝手にとっても怒られないと思うので、どうしても足りなくなったらとりにいきます。

 

 ただ、土手などはお役所が定期的に草刈りをしています。その時桑も一緒に刈られてしまうことが多いので、土手の桑だけを頼りにしていると残念なことになります。また、桑は日当たりがよくて乾いたところで育てないとうどん粉病などの病気になりやすいので、健康な桑の葉を用意するには、自分で育てるのが一番確実です。

繭をあけて中の様子をみてみよう

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 お蚕は、まず粗く糸を張りめぐらします。それから、粗い糸の中に繭を作りはじめます。十分に繭が厚くなると、中で脱皮して蛹になります。

 

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 簇(まぶし)からはずしてみました。繭のまわりの粗い糸は毳(けば)と呼ばれていて、これがついたままではうまく糸をつむげないので、農家では毳をきれいにむいてしまいます。沢山むくので毳をむくための機械もあります。

 

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 もちろん手でむくこともできます。このとおり、つるっとむけるので面白いですよ。毳も捨てずにとっておけば、毛糸にしたり、クッションに詰めたり、いろいろ使えます。

 

 健康な繭は指でおしても簡単には潰れないくらいしっかりしています。でも、幼虫の時期に餌が少なかったり、何かの病気にかかっていたりすると、ペコペコへこんでしまう薄い繭になってしまいます。

 

 わたしはあくまで趣味で飼っているので出来そこないも自然のなりわいだと思うことにしていますが、養蚕農家ではなるべく良い繭を取るために、さまざまな工夫をします。たとえば、蚕を飼う部屋の温度を管理したり、餌の量に気を使ったり。

 

 江戸時代の養蚕書を読むと昔の人が本当にお蚕の世話に気をつかっていたことがわかります。養蚕をする間は、世話をする女の人がお蚕に専念できるよう、普段の仕事を少なくしなければならないし、化粧すらしてはいけないって書いてあるんですよ。身なりに気をつかっている暇にお蚕を見てやれというわけです。果ては家に不幸があってもいけないと書いてあります。お蚕が神様から与えられた神聖な虫だから、と説明されてることが多いですが、おそらく家がごたごたしていると、お蚕の世話がおろそかになるので、養蚕をしている間は家内安全を心がけないといけない、ということだと思います。

 

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 繭をいくつかあけてみました(写真がたまたま白い繭ばっかりですが、最初の写真と同じく元ぐんま黄金ちゃんです。二代目なので白い繭も出来てしまったのです)。右手前はすっかり蛹になっていますが、左奥はまだ幼虫のまま体がちぢんでいます。左奥のような状態を前蛹(ぜんよう)といいます。繭になる前は体長が 55〜60mm くらいあったのに、繭を作り終えるとこのとおり縮んで 25mm くらいになってしまいます。

 

 きちんと蛹になったものは、お尻の形を見ると、オス・メスを見分けることができます。ただ、小さいので、見てわかるような写真がとれるかどうかですねー。あと二、三日したらほかの繭もあけてみて、写真をとってみようとは思うのですが。

 

 なお、繭をあけても蛹や前蛹は死にません。そっともとに戻しておけば、やがて羽化して蛾になるはずです。

ぐんま黄金の二代目はどんな色の繭を作るか

 同じ品種のお蚕どうしを交尾させても、同じ性質の子供ができるとは限らないというのは前に書きました。

 

この記事です

http://okaiko.hatenablog.com/entry/2013/06/17/113437

 

 今育てているのは「ぐんま黄金」という品種同士を交尾させて生まれてきた二代目です。オリジナルのぐんま黄金はまぶしいくらいの黄金色の繭を作る品種ですが、その二代目がどんな繭を作るかっていうと……??

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 なんと、二代目は繭が白かったり黄色かったりするのです。黄色い繭も、オリジナルのぐんま黄金にくらべると色が薄いかもしれません。こんなに変わっちゃうものなんですね。