趣味の盆蚕

「しゅみのぼんかいこ」とは、盆栽を楽しむように小規模に養蚕を楽しむという意味で、ブログ筆者の造語です。略称は「ぼんさん」

趣味の盆蚕 YOUTUBE動画


 数分ごとの短い動画の再生リストになっています。

 ぜひチャンネル登録を、と言いたいところなんですが、わたしのyoutubeアカウントはお蚕以外のこともごっちゃまぜにやっているのでお蚕意外は興味ないよっていう場合はチャンネル登録しても面白いことはないと思います。

 おりがみの動画とか、昔話の動画とか、時々下手な歌を歌ったり、そんな感じで、あまり更新頻度は高くないです(時々集中してアップロードすることがありますが)。それでもいいよとおっしゃる方は登録をお願いします。自分のアカウントページみたいなのってこれでいいのかな>chinjuh - YouTube
なんせ日本人がろくにいなかったころからやってるもので、その頃今みたいな感じじゃなかったので、実は未だによくわかってないです。

追記

 前にもお蚕の動画を作っていて、下はその総集編みたいなやつです。昔の動画は探すのめんどくさいなと思ってたら、どこかで紹介でもされたのか、コメントがついたのでみつかりました。視聴者様々であります。
youtu.be

お蚕は本当にクワしか食べないのか?

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クワの葉のいろいろ

 この写真は、わたしがある日、お蚕にくれるために「クワ」だと思って色んな場所でとってきたものです。ちなみにお蚕は全てを喜んで食べました。

 ただ、写真では見分けがつかなのですが、ひとつだけ手でさわってみると裏側がビロードのような手触りの葉っぱが混ざっていました。クワ科植物の見分け方を調べると、どうもそのビロードみたいなやつは「カジノキ」というクワ科の別の植物かもしれないです。

 日本の公園や道端、河原なんかに自生しているクワ科植物は、

  • クワ科
    • クワ属
      • ヤマグワ
      • マグワ(ヤマグワの栽培品種だと言われてる)
      • その他クワ属の園芸品種いろいろ
    • コウゾ属
      • カジノキ
      • ヒメコウゾ
      • コウゾ(カジノキとヒメコウゾの雑種)
    • イチジク属
      • イチジク

…あたりじゃないかと思うんです。あ、小笠原とか沖縄とかの南洋の島々は本州のような温帯とは植生が違うのでちょっとわからないですけどね。

 これらのうち、イチジクは葉っぱの質感が形がまるっきり違うのでクワと見まごうことはないんですが。カジノキとヒメコウゾあたりは葉っぱの形がクワのバリエーションにしか見えないので、パッと見では見分けがつかないことが多いです。

 しいて違いをあげると、カジノキは葉の裏側がビロードのような手触りで、ヒメコウゾは葉柄が異常に短いです。あと、花や実がついてるとそれぞれ形が違うので見分けられる場合もあります。

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たぶんヒメコウゾ(葉柄がすごく短いのでクワではない)

 ヒメコウゾの若い木は葉に深い切れ込みがあって、特徴的な形をしてる場合が多い。こんな特殊な形をしてるなら一目で見分けがつくんじゃないかと思いがちですが、ヒメコウゾもクワも葉の形にバリエーションが多くて、そう一筋縄ではいかないんです。

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これは葉柄が長いのでたぶんクワ

 上の写真も葉に深い切れ込みがあって、これが本当にクワなのかしらと疑わしく思ったりするんですが、葉柄(茎と葉の間にある「柄」の部分ですね)が、しっかりと長いのでクワだと思います。

 今まで「お蚕が喜べばすべてクワ」と納得していたのですが、今回は「手触りがビロードならカジノキ」「葉柄が短ければヒメコウゾ」「それ以外がクワ」「あとイチジク」の四種類を見分けて与えてみました。

クワ(クワ科クワ属)
 当然食べる。

カジノキ(クワ科コウゾ属)
 喜んで食べる。というか、今までクワだと思い込んで与えていた葉っぱがかなりの確率でカジノキだった。

ヒメコウゾ(クワ科コウゾ属)
 喜んで食べる。これも今までクワだと思い込んで与えていたものの中にけっこうまざってた。

イチジク(クワ科イチジク属)
 食べないことはないが、それほど好きではないらしい。全然食べないこともある。

 このような結果になりました。カジノキ、ヒメコウゾはなんの心配もなくモリモリ食べます。お蚕はクワ科ならクワじゃなくても食べるのかも知れない?!

 しかし、同じクワ科でもイチジクは条件付きです。過去に何度かお蚕にイチジクを与えてみたことがあるんですが、「まったく食べない」こともあれば、「与えた直後はものすごい勢いで食べ始めるが、途中で飽きて食い残す」こともあったし、「クワ同様喜んで食べる」場合もありました。なので、イチジクは△です。食べなくはないが、そんなに好きじゃなさそう。

 ただし、イチジクはクワほど大量に摘んでこられないので、卵から成虫になるまでイチジクだけで育てる実験はしたことがありません。広い庭でもあったらイチジクを植えてみるんですけどねえ。

 そんなわけで、実験の結果としては「お蚕はクワ科の植物だとなんでも食べる可能性がある(ただしイチジクは条件付き)」でした。

お蚕に寄生するハエ

 お蚕に寄生するハエはカイコノウジバエと言うそうです。本当にそれ一種類しかいないのか、わたしにはちょっとわからないんですが、ここではそれだということにしておきます。

 カイコノウジバエは春に現れて桑の葉に卵を産むそうです。それを芋虫や毛虫が葉っぱごと食べると、腹の中で卵が孵化して蛆(うじ)になります。お蚕だけでなくアメリカシロヒトリなども桑の葉を食べるので寄生されるそうです。

 蛆は宿主が蛹になると腹から出てきます。お蚕の場合だと蛹は繭の中にありますから、その繭を食い破って外に出て蛆も蛹になります。繭は穴を空けられてしまっているので普通の方法では糸にならず、商品価値がなくなります。

 このように蛆に寄生されてしまうのを「蠁蛆病(きょうそびょう)」と言うそうです。蠁も蛆もハエの幼虫のことです。蚕の腹から出たハエは蛹のまま越冬して春に羽化するそうで、春蚕の病気として知られているとか。

 ってことはカイコノウジバエは一化性で年に一度しか発生しないんですね? ちょっと意外だなあ。ハエなど気温が高ければ何度でも発生するんじゃないかと勝手に思っていました。

 以前、外から拾ってきたクワゴクワコ、野生の蚕)から蛆が出てきたことがあり、その時は羽化させて写真も撮ったような気がしていたのですが、残念なことにみつかりませんでした。今年の蛆もとっておいてみようと思いますが、羽化が来年だと忘れて捨ててしまいそうです。

 参考資料は下記の文書です(PDF形式)。大日本蚕糸会のサイトにある資料らしいです。ちょっと前までお蚕の病気など一般のわたしたちが見られる資料が少なかったんですが、今はこういったものがネットにもアップロードされてとても助かりますね。
http://www.silk.or.jp/silk_gijyutu/pdf/8-6setsu.pdf


当ブログ関連記事
okaiko.hatenablog.com
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桑の木につく虫(テツイロヒメカミキリ、クワノメイガ)

 今年はすごく久しぶりにお蚕をやりました。お蚕の動画や、養蚕関連の昔話の動画なんかも作ってるので、おいおい貼っていこうと思います。

 

 今日はいきなりですが、お蚕ではなくて、桑(クワ)の木につく虫の写真を貼ろうと思います。twitterへの投稿のまとめですけどね。

 

テツイロヒメカミキリ(写真は成虫)

 

 

 テツイロヒメカミキリはすごく小さな虫なんです。頭から尻の先まで13mmくらいしかないです。これが最近うちのほうでは増えてるみたいで、けっこうな確率で桑の葉に成虫がくっついてます。

 この虫、10年とか前だと、京浜地帯、京阪地帯、長崎などの港のあるところでしか見つからなかったので、外国から貨物船にでもくっついて入り込んだ移入種じゃないかと言われてたはずなんですが、なんか今検索してみると、東京あたりだと普通にどこにでもいるみたいで、すっかり帰化しちゃってるんですねー。

 ヒメカミキリ属に似た虫がいくつかいるので精密に見分けるならツイートにあるみたいに触覚の節の長さを比べないといけないみたいですが、あまりに小さいので顕微鏡みたいに拡大できないと難しいです。わたしはスマホに100均のマクロレンズをつけて写しています(デジカメのマクロより寄れるので、極く小のものを見るのにすごく便利)。そういう事ができない場合は、小さなカミキリムシで、色が茶色で、前翅より背板が黒っぽければ、たぶんテツイロヒメカミキリだと思われます。

 カミキリムシは幼虫が木の幹に巣食うので、たぶんうちの桑の木がこいつの幼虫に食い荒らされてるんじゃないかと思うんですけど、うーん、大丈夫かなあ、ハラハラドキドキ…

 そういえばテツイロの成虫は何を食べてるんでしょうね。葉っぱについてくるから、葉を食べてるのかなあ。

 

クワノメイガ

 クワノメイガは昔からいるやつで、漢字では桑野螟蛾と書きます(冥蛾と書く人もいます)。

 

 

 

 クワノメイガは、メイガ科の虫です。メイガは螟蛾と書きます。

 これ、昔からなんでそんな名前なのかなーと思っていたんですが、どうも中国の言い伝えに関係してるらしくて、『説文解字』という中国の古い辞典に「蟲食穀葉者。吏冥冥犯法卽生螟。从虫从冥,冥亦聲」とあります。意味は「穀類の葉を食べる虫。役人がこっそり法を犯すと螟(という虫)が生まれる」とかでしょうか。後半は文字の成り立ちですね。冥々にして(暗い所で、隠れて)法を犯すと発生する虫なので「螟」という字になって、読み方は冥と同じとか、そんなニュアンスかな(テキトーですみません)。

 古代中国では人の上にたつ者の動向が自然現象に影響すると考えていて、名君が立つ時は麒麟などの瑞獣が現れるし、役人が悪さをしてれば虫の害が出るというわけです。

 昔の中国人が言ってる螟は、たぶんすごく大ざっぱに「穀類の葉を食べる虫」だから、メイガ科だけでなくヤガ科のヨトウガ類とか、なんならウンカやヨコバイみたいな芋虫じゃないやつも含んでいたかもしれないですけど、現在は蛾類の一部が「メイガ科」として分類されています。メイガ科の虫は数が多くて、穀類につくものもいれば、クワノメイガみたいに桑を食べるのもいて、いろいろです。

 それにしても、この小さな虫が古代中国由来の名前を背負ってるなんて、ちょっと意外でした。知らないだけで他にもあるのかも? ちなみにこれは『字統』を読んで気付いたんです。白川静先生すげえ。

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クワノメイガ(成虫)

 一枚くらい写真をはっておかないと、リンクしたときにサムネイルが寂しい感じになるのでー。

真綿作り〜ずり出しで紬の糸に

 みなさんお久しぶりです。二年くらいお蚕をやめてたんですが、冷凍庫にほったらかしにしてあった繭を使おうと思いまして、真綿作りをしました。ツイートはしたのですが、ちょっとまとめておこうと思います。

 ただ、最初にいっときますが、わたしは繭になったあとのことって、本当に手探りで、資料映像とか見た事はあっても、実際に人に習ったりしてないので、本当に救いようがないくらいヘッポコです。群馬では養蚕は分業でやっていて、種(卵)から孵化させて稚蚕を育てる人、ある程度育った蚕を買ってきて育てる人、繭から糸をとる人、糸から布を作る人、全部別の仕事です。祖母がやってたのは「ある程度育った蚕を育てる人」だったので、そこから繭になるところまでしか知らないんですよね(笑)

 しかし趣味で飼い始めると繭を利用しないとたまる一方だし、もともと手作業は嫌いじゃないのでいろんなこと試してみてるわけです。

 というわけで、ツイートのまとめ+補足、いってみます。

 


真綿を作る(新小石丸という品種の繭を使っています)

繭のストックがけっこうあるので真綿を作ったりしてる。これまたヘッポコなので資料動画とかは作れないんですけど。 U字型の枠にかぶせて真綿にするのは日本でもやってるかもしれないけど中国でけっこうするみたいです。この写真だけで下手なのが分かる(恥) pic.twitter.com/9D4j3yH65I
posted at 10:22:05

 

 真綿というのは簡単に言うと蚕の繭をほぐしたものです。繭を茹でてゆるくしたものを、平たくのばして乾かしたものです。何に使うかっていうと布団綿にしたり、綿入れの着物の綿にします。それと、真綿から繊維を引っ張り出して疑似的な撚りをかけることで紬(つむぎ)という糸にもなります。

 紬の着物ってありますよね。ぱっと見は木綿みたいなんですが、実はあれ、絹なんですよ。いつごろからそういう糸の作り方があるのかはわからないんですが、普及したのはやっぱり江戸時代で、倹約令で絹の着物が禁じられた時に、ぱっと見は木綿なんだけど絹でできてる紬の着物が流行ったんだとか聞いたことがあります。

 さて、真綿ですが、繭を茹でてほぐしたあと、繊維をどうやってひきのばすかで形がかわってきます。日本だと額縁みたいな枠にかけて四角く整形したものが多いような気がするんですけど、地方によってもちがって、楕円形に伸ばすのとかもありますね。

  下の画像は『かゐこやしなひ草』という養蚕を説明した江戸時代の本で、真綿を作ってるシーンです。この挿し絵を見ると茹でてやわらかくした繭を地面に立てた二本の杭にひっかけて伸ばし、伸ばしたものを干して作ってますね。とにかく、繭をほぐせればいいんだと思います。

 

かいこやしない草

かゐこやしなひ草

軽く説明すると、重曹を入れた水から繭を茹でてやわらかくする。熱いと触れないので水を差していいぐあいに温くして作業する。柔らかくなった繭を手でほぐして中から蛹と脱皮殻をとって、枠にかぶせて薄くひっぱり伸ばす。何個分か重ねて伸ばしたら枠からはずす。写真は茹でてやわらかくなった繭。 pic.twitter.com/TqBHcUYN0c
posted at 10:25:12

 

 繭はセリシンという物質で繊維同士がかたくくっついていて、繭同士がぶつかるとコンコンといい音がするほどです。セリシンはお湯に溶けるので、基本茹でればいいんですが、重曹を入れるとより溶け出しやすくなるみたいです。茹で方は、プロにはなんらかのノウハウがあると思うんですけど、わたしは完全に適当でで、シャトルシェフ(保温調理器)で茹でてます(笑)

 鍋に繭と、繭が浸るくらいの水を入れ、重曹を少々(なんか適当に入れてます。たとえば繭30個が浸る水の量に対して重曹ティースプーン1杯とか)入れて、適当なサイズの皿を伏せて落とし蓋にします。繭は水に浮くので、沈めておくための落とし蓋です。趣味でちょっとだけやるなら、わざわざ落とし蓋を買うより皿がいいと思います。

 鍋を火にかけて、その上から普通の鍋の蓋をします。ふたはちょっとずらして隙間を作っておくと沸騰したのがわかりやすいですね。沸騰したら、シャトルシェフならそこで火をとめて保温釜に入れて30〜1時間くらい放置します。普通の鍋だったら弱火にして30分くらい茹でるといいんじゃないでしょうか。

 ゆで上がったら落とし蓋をとって(皿はすごく熱くなってるので箸かスプーンでうまく持ち上げてとってください。火傷注意)、鍋にそーっと水をさして手でさわれる温度にします。水はジャーッと緩んだ繭が暴れてしまい、繊維同士がからまってその後の作業が面倒なことになります。また、完全に冷水にすると溶け出したセリシンが固まるので、ぬるま湯の状態で作業するといいです。

 そこからの作業は、動画だとわかりやすいのかもですが、わたしがヘッポコすぎて恥ずかしいものしかできないので、このまま言葉で説明します(笑)

 繭をひとつとります。ほかの繭とからまってると思うので、ピューッと引っ張って一個にしましょう。その後の作業はぬるま湯の中でやってください。繭の一ヶ所に穴をあけます。繊維の間に指を入れれば簡単に穴があきます。中にお蚕様(の蛹)がいるので、下から指で押し出します。蛹(さなぎ)はわりと簡単に出てくると思います。

 繭が新しいうちは、この蛹は食べられますので、わたしは炒め物にしたり、佃煮にしたりして食べてます。独特の香りをいやがる人もいますが、美味みが強く、わたしは美味しいと思います。今回は何年か放置した繭なので、残念ですが捨てました(庭みたいなところに埋めたりして。植木の肥料になるかもしれませんし)。

 閑話休題、蛹は簡単に出てくるのですが、脱皮殻は繊維と絡まってとりにくいですが、頑張ってとります。水の中でなるべく繊維からはずしたあと、指でつまんで絡んでる繊維を引きちぎる感じですね。

 繭だけになったら、ぬるま湯の中でかるく広げます。繭に穴をあけたわけですから、お椀のような形になってるのが理想ですが、そそう理想通りにはいきませんので、あまり気にしない。これを枠にはめて延ばします。わたしがやってるやり方だと、U字型の枠にかぶせて下にひっぱる感じです。四角い枠にはめるより簡単じゃないかと思います。

 ちなみに、このU字型の枠は、ダイソーの園芸コーナーで買いました。農作物に寒冷紗をかけたりするのに使う枠です。ダイソーだと手ごろなサイズが常にあるわけじゃないのでホームセンターで探すといいかもしれません。本来は竹を曲げて作るので、竹やぶを持ってる人は竹で作ってください(笑)

 

繭一個を枠にかけたら、そこに重ねて二個、三個と枠にかけていきます。繭は品種によって厚さも違うので、何個分かけるとかは自分で決めていい(商売じゃないので適当で)。 枠からはずしたら適当に畳んで両手のひらに挟んできゅーっと水を搾っておく。写真はたたんで絞ったところ。 pic.twitter.com/qzF0ZMGAyF
posted at 10:28:07

完全に渇く前に軽く水洗いして、また畳んで手のひらにはさんで水気をしぼる。写真は水洗いしてるところ。水の中で広げると枠にかけたときの形に戻る。クラゲみたいできれい。 洗って水気をしぼったら干して乾かせば真綿ができる、はず。 pic.twitter.com/mAjXEEKzAE
posted at 10:31:32

……そのはずですが、わたしは下手くそなのでプロのような仕事はできません。あくまで遊びです。 真綿はプロみたいに上手に作るとすごいんです。人が二人で四隅を持ってびゅーっと広げると、おおおっ?!と思うくらい広がります。きっとどっかにプロの動画があるから興味がある人は探すといいですよ。
posted at 10:35:54

わたしの場合は、そういうすごい真綿は作れないので、真綿をさらにひっぱって糸にする方法で紬糸を作ろうかなと思っています。これまたお遊びですけど。 なるべく太めにとったらあんぎんの横糸にできないかなあと思ったりするんですけど、うーん、まあ、思うだけでなかなかね(笑)
posted at 10:37:29

 いやほんと、誰かに弟子入りできたらいいんですけど、動画見たり想像したりとかでテキトーなので、ただひたすらヘッポコなんですごめんなさい。


真綿を作る(春嶺鐘月編)

毎日何十個か、ちびちびやってる真綿作り。昨日までは小石丸という、皇居で美智子や雅子様が育てていたのと同じ品種の繭だった。これは繭の厚みもあまりない古い品種。だから5個分とか広げて重ねても写真みたいにスケスケになってしまう(わたしが下手なせいもあります)。 twitter.com/chinjuh/status…
posted at 12:12:11

 

 ツイートでは小石丸って言ってますが、よく考えたら新小石丸でした。美智子様が飼ってて、雅子様がひきついだ小石丸という品種は江戸時代にはすでにあったと言われてる古い品種なんですが、繭がすごく小さくて、糸があんまり沢山はとれないんですよね。それを少し品種改良したものです。たぶん病気に強くなってたり、糸を沢山吐くようになってるんじゃないかと思います。群馬で作られた品種で、数年前までは群馬の蚕糸試験場みたいなところから蚕種を取り寄せる事ができたんですけど、今は県外には配布してないので手に入れるのが難しくなりました。

 糸を沢山吐くといっても一般に普及した品種にくらべるとかなり少なめです。どのくらい違うかっていうと下のツイートをどうぞ。

 

今日から始めたのは今日は春嶺鐘月という品種改良が進んだもので、養蚕農家で広く飼育されてたので普通種なんて呼ばれてたりもするかもしれません(そういう呼び方をする品種はほかにもあると思います)。 小石丸と比べると、驚くほど繭が厚くて、五枚重ねるとこのとおり、全然違う。 pic.twitter.com/RmNzDt9Dw3
posted at 12:14:20

まあ、わたしが下手なので、均等にのばせてなくて、あんまりいい資料じゃないですけどね(笑) ぬるま湯のなかで繭をほぐしていても手触りで全然違うって思いますよ。
posted at 12:17:43

 

 最初のツイートに貼った写真と同じく繭を5個分重ねてあるはずなんですが、厚みがぜんぜん違うのがわかるでしょうか。普通なら糸は沢山取れたほうがいいので、古い品種はだんだん廃れてしまいます。皇居のご養蚕所でも、もう小石丸は処分していいんじゃないかと言ってたそうなんですが、美智子様が古いものも残しておきましょうと飼い続けていたそうです。

 ある時、正倉院に納められている古代の布が再現されることになって、なるべく古い品種の蚕が求められました。品種によって糸を吐く量も違えば、糸自体の太さや質も少し違うので、なるべく古いものにこだわったんですね。小石丸自体はジーンバンクとかで絶やさないように育てられてはいるんですが、布にするほどだと何万匹も飼う必要があります。それをしてるのが皇居のご養蚕所くらいだったんだそうで、美智子様が桑くれをしたお蚕の繭が使われたと、けっこう話題になったんです。

 それで養蚕をやってる農家でも、うちでもやりたいって話になり、より飼いやすい品種として新小石丸ができたんだったかな(うろおぼえ)。違ってたらごめんなさい。

 春嶺鐘月という品種は、春と嶺の子を鐘と月の子に掛け合わせた四元交雑品種です。野菜なんかでよく言う F1 品種みたいなやつ(同じと言っていいのかよくわからない。四元の場合、なんか別の言い方するかもしれないので)で、春嶺鐘月の子同士をかけあわせても春嶺鐘月にはならないので、毎回複雑な交配をしないと春嶺鐘月になりません。そんな面倒くさい交配をしてでも作りたいほど育てやすく沢山糸を吐く蚕というわけです。

 もちろん、一般の農家でこんな複雑な交配を毎季節やるわけにはいかないので、専門の蚕種屋さんがやって蚕種を売り買いする仕組みがありました。F1品種の野菜をサカタやタキイが作って売ってるのと同じです。

 今、野菜でF1品種は同じ品種どうしをかけあわせても親と同じ性質にならないと、いくら説明してもわかってくれない人がいるみたいに、お蚕もほっとくと親と違う性質のものを親の名前で売ろうとする人がいるので、品種を保護するために昔は蚕の交配には許可が必要でした。しかし養蚕は現在ではほとんど廃れた産業なので、その法律はいつだったか廃止されました。

 そんなこんなで、真綿を作りました。一日中この仕事をするのも飽きますし、干しておく場所もないですから、繭を30〜40個くらいずつ茹でては真綿にして、物干しにぶらさげて干しました。

 


真綿から糸を作る

自作の下手くそな真綿

真綿(そうとう下手くそ)

 これが自作の真綿です。断じて言いますが、プロの真綿はこんなんじゃないです。もっとこう、すごいんです。もう全然違う見た目で、プロのものを見てしまうとわたしのブログなんか今すぐ読むのをやめたくなると思います。こういう言い訳をしなくてもいいような上手な真綿を作りたいです。誰か教えてwwww

 とにかく、繭をほぐして引き伸ばして干しました。一応真綿です。これを糸にするんですが、その際に日本では下のような形の器具を使うことが多いです。

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真綿を糸にするときに使う器具

  糸巻きに似てますが、回転はしなくて、ただ真綿をはめておくだけなんです。ここから繊維を少量つかんで引っ張って、水をつけた手で軽く撚ると、セリシンでくっついて糸になります。

 この器具、あると便利でしょうけど、作るのは面倒くさいので、何か別のもので代用できないかなと思って、下の写真のようなものを作りました。

 

すのこに釘を打って作った真綿をかける器具

すのこに釘を打って作った真綿をかける器具

 写真だと大きく見えそうですが、30cm四方くらいのすのこに無数の釘を打ったものです。このサイズのすのこを昔ダイソーでみつけて買いました。多きはさ適当でいいし、すのこである必要もないですが、釘を打てる板状のものがいいと思います。

 日本の動画で、これに近いものを使ってるお婆ちゃんを見て、これだ!と思ってまねをしています。

 ここに真綿をかけます。真綿は乾いてすこし固くなってるし、伸ばすのが下手くそだと固まってる部分もあるので、軽く揉んだりして繊維をほぐして、下の写真のように釘にひっかけて広げます。

すのこで作った器具に真綿をかけたところ

すのこで作った器具に真綿をかけたところ

 ちょっと薄い真綿でしたね。もうちょっとマシにできてるのを選べばいいのにって思いますが、あんまり気にしないでください。気にする人はわたしのブログなんか見てちゃだめだと思います。こんな感じに、釘と釘のあいだに繊維が軽く張ってる感じになればいいです。

 

水を入れた容器と、糸を入れるための容器を用意する

水を入れた容器と、糸を入れるための容器を用意する

 糸を撚る作業は、常に手を濡らしながらやるので、水を入れたボウルかなんかを用意してください。また、作った糸を入れるための空っぽの容器も必要です。

 

すのこの器具から真綿をひっぱって糸にする様子

すのこの器具から真綿をひっぱって糸にする様子

 すのこの器具にかけた真綿から、繊維を少しつまんで引っ張ります。すると、ずるずるっと長く出てきますから、利き手に水をつけて指先で繊維に撚りをかけます。撚り(より)といっても、本当にねじれているわけではなくて、繊維同士がからまってくっついているだけなので、疑似的な撚りになります。羊毛や木綿だと、このやり方では糸にはならないんですが、絹だと繊維が長く、強く、互いにからみやすいので、こんな方法でも糸になります。真綿から引っ張り出す様子から、この手法を「ずり出し」などと呼ぶみたいです。

 絹の繊維は強くて、引っ張るのにそれなりに力が必要です。すのこの器具も一緒についてきてしまうことがあるので、クランプみたいなもので軽く机にとめておくと楽だと思います。途中で向きを変えたくなるかもしれないので、軽くとまってれば充分です。床に置いてやるなら足でおさえてもいいんじゃないでしょうか。

 手につける水は、水道水を使っていますが、井戸水だった時代は地域によっては鉄分が多く含まれていたりして、糸の色を悪くしてしまうことがあったそうです。それで、正式な作法としては、指先をぺろっと舐めてしめらせてからよりをかけるのは正しいそうです!

 わたしも最初はなめてやってたんですが、年をとってくるとつばもそうそう出ませんし、つばをきれいにしておくために途中でお茶も飲めませんから、今は水道水でいいやってことにしています。

 

撚った糸はからの容器に入れていく

撚った糸はからの容器に入れていく

 撚った糸はカラの容器に入れていきます。

 

ずり出して薄くなった真綿

ずり出して薄くなった真綿

 さんざん糸をとって真綿が薄くなったら、この上にさらに真綿をかければ、続けてずり出すこともできます。今回はここでやめときます。続きは同じように繊維をひっぱって、今日作った糸の端っこに水をつけてよりよりすればくっつきますから大丈夫ですよ。

 

今回できた糸

今回できた糸

 今回出来た糸です。指先をなめて作れば糸はあまり濡れないんですが、今回は手水を使ったのでけっこう濡れてますので、すぐにしまい込まず干して乾かしたほうがいいと思います。

 この量で繭は4個分くらいだったでしょうか。5個くらいずつ重ねてるんですが、自家用なのでボーッと作業してて、4個だったり6個だったり、いろいろなんです。薄かったので4個かなあと。

 1個の繭からできる糸は、そう多くはないんです。着物にするくらい糸を引くには、一万何百個とか繭を使うと聞いた事があります(小石丸系の繭の小さい品種だったら倍くらい必要)。

 こうやって作った糸は、よりがかかってないので緯糸(よこいと)として使われることが多いのですが、ほんとうに上手な人が作ったものは強度を求められる經糸(たていと)にも使えるというのも聞いた事があります。

 ずり出しで作った糸を緯糸にして布を織ると紬(つむぎ)という絹織物になります。すでに説明しましたが、見た目は木綿みたいだけど絹なので、倹約令が出て贅沢品を身に付けられなかった時代に、お洒落な人はこぞって紬の着物を求めたそうです。絹の衣服は軽いし、蒸れないし、繊維がたんぱく質なので色鮮やかに染まります。それに、高級に見えないのに実は高級っていうのが逆にイキだったんでしょうね(倹約令の意味はどこへ?)。 


 というわけで、真綿作り、ずり出しによる糸作りでした。たぶんyoutubeあたりで「ずり出し」などを検索すると、わたしのブログを二度と見たくなくなるようなちゃんとした解説の動画があると思います。そりゃあ、わたしだって「うちを見れば全部済みます。どんどん見て!」って言いたいわけですが、いやね、さすがに、こうヘッポコだと言い訳しとかないと叩かれそうなんだもの。

 いやあ、叩くなら炎上するくらい叩いてほしいんです。喜んで広告貼りますわ(それか!)。大もうけしたら桑畑用に土地買いますわ。養蚕じゃ炎上しそうもないですねえ。

 

放置前の言い訳(おおざっぱに飼い方をおさらい)

養蚕 | 超・珍獣様のいろいろ

↑わたしがやってる別のブログの養蚕カテゴリーへのリンクです。初夏だけですが毎年何かしら飼ってるので、お蚕が見たい人はこちらもどうぞ。ブログ全体は特にテーマもなく、いろんなことを雑多に放り込んでます。

 

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 わたしはまたお蚕を飼っていますが、このブログはしばらく放置しようと思っています。新しいブログサービスの使い勝手のお試し用に作ったものなので、もういいかなって感じになりました。

 

 放置する前に言い訳を少し書いておきますね。

 

 わたしは養蚕を幼児の頃に(ほんとに幼稚園とかの頃なんです)祖母から習っただけで、人に飼い方を教えられるような立場じゃありません。そのくせ「もっとカジュアルに、そこいらであるもので飼ってみるテスト」なんてこと言いながらお蚕を飼っています。そのため、偉い人から見ると「こいつメチャクチャだぜ(藁」みたいな事を平気でやっているかもしれません。

 

 たとえば自分でかなり気になっているのは、稚蚕をタッパー飼いしてる所とかですね。タッパーは蒸れてカビが生えるのでよくありません。タッパーでも大丈夫なのはせいぜい20頭とか、少ない数の時だけですからほんと注意しましょう(笑)

 

 比較的まっとうな飼い方として、上に貼った写真のような方法を提案します。図解すると下のような状態です。

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 ビニールは餌が乾燥しないようにするために必要です。これをかぶせておかないと桑がパリパリになってしまいます。

 ただし、ビニール袋の中に入れてしまうと蒸れすぎるのでよろしくないです。二つ折りにしたビニールの間に、お蚕をのっけた紙を挟む感じです。これなら横から空気が抜けるので蒸れすぎることがなく、乾燥も防げます。ビニールは、ビニール袋をはさみで切って広げて使うと扱いやすいです。

 

 お蚕の数が多かったり、湿気の高い季節だったりすると、これでも蒸れるかもしれないので、その場合は、ビニールを下に敷くのをやめるか、上にかぶせるのをやめるか、どっちかで湿気を調整します。

 

 お蚕がまだ小さいうちは、餌の交換が難しいと思うので、餌を上に追加するだけにします。でも、下に敷いてある紙は毎日交換してください。古い餌ごと新しい紙に移せばいいと思います。お蚕が一度か二度脱皮すれば、餌も交換できるようになると思いますので、そしたら毎日古い餌と糞は捨ててください。

 

 紙は、上に貼った写真だと天ぷらの下に敷くやつ(100円ショップにある)を使ってます。半紙でもいいです。もっと大きなザルの上で大量に飼うなら模造紙とかでもOKです。

 

 餌の交換は、なるべくお蚕を手でさわらないようにやります。たとえば朝起きたら、桑の葉が葉脈だけになってると思いますので、お蚕がしがみついてる葉脈をつまんで新しい紙に移し、上から新しい餌をやります。

 

 もしくは、古い餌の上に新しい餌をのせて、お蚕がのぼってきたところを見計らって、新しい餌ごと新しい紙に移してやるとかします。

 

 お蚕が脱皮している時は、なるべく触らないようにします。うっかりさわると脱皮できなくて死んでしまうことがあります。成長がそろっていて、いっせいに脱皮しているならば、脱皮の間は餌をやらず、おわってからやるようにします。

 

 成長にばらつきが出て、こっちでは餌を食べてるのに、こっちでは脱皮してる、というような時はしょうがないから餌をやるんですが、脱皮を邪魔しないように、上にそっと餌をのせるだけにして餌の交換をやめておくとか、臨機応変にやってみましょう。基本は、観察力です。マニュアルよりも自分の目を信じましょう。

 

 お蚕が育ってくると、ザルが手狭になるかもしれません。狭いなあと思ったら、もう一枚ザルを増やして広げてやってもいいですね。狭いところで沢山飼うと、餌をたべられない蚕ができていまうので、育ちにばらつきが出てしまいます。これも「狭そうだな」と思ったら分ける感じでいいと思います。そのくらいのゆるい感覚でも案外、育っちゃうものです。

 

 お蚕が四回脱皮したら、乾燥気味に管理してください。この段階で蒸れると病気が出やすいです。ビニールをすっかりとってしまうか、下か上のビニールをやめるとかしましょう。

 

 それと、大事なことですが、最初から完璧に飼おうなんて思わないこと! プロになりたいなら養蚕農家に弟子入りしてみっちり覚えたほうがいいですが、あくまで趣味の盆蚕(盆栽みたいに小規模にやる養蚕)ですから、今回は失敗だったなあと思ったら、次はうまく行くように工夫すればいいんです。それが楽しみであり、学ぶってことなんじゃないですかね。

 

 まあそんなこんなです。きっと世の中にはもっとまっとうな養蚕家のみなさんがいらっしゃると思うので、わからないことはネット検索するといいですね(って逃げておく)。

 

 

 それではみなさんおたっしゃでー。

衣笠姫(群馬県甘楽郡)

 むかし衣笠姫という美しい娘がいた。実の母が病死すると、父は新しい妻を迎えることになった。

 

 ところがこの人は心の悪い人だった。血のつながらぬ衣笠姫を憎み、厩(うまや)にとじこめてしまった。馬が暴れて姫を踏んづけたので、姫の背中には蹄の跡がついてしまった。爺やがあわててお救いしたが、姫はしばらく死んだようにぐったりしていた。

 

 次に継母は姫を竹やぶに置き去りにした。婆やが探し出してお助けしたが、姫は衰弱して死んだようにぐったりしていた。

 

 三度目はたらいに乗せて川に捨てられた。爺やと婆やが探し出してなんとかお助けしたものの、姫は疲れ切ってぐったりしてしまった。

 

 継母はすっかり怒って、四度目には庭に穴を掘って姫を生き埋めにしてしまった。爺やと婆やが気づいた時にはもう遅く、姫は息絶えていた。

 

 それからしばらくすると、姫が埋められたところに黒く小さな芋虫がはいまわっていた。虫の体には馬のひづめのあとのような斑があった。

 

 クワの葉をあたえて育ててみると、急に死んだように動かなくなり、しばらくするとまた動きだして葉をたべはじめる。そういう事が四度あ り、繭を作った。ちょうど姫が継母に殺されかけたのと同じ回数である。姫の一生になぞらえて、最初の休みをシジの休み、二番目の休みをタケ(竹)の休み、 三番目の休みをフナ(船)の休み、四番目の休みをニワ(庭)の休みと呼んだ。

 

 今でも群馬では蚕を「お蚕さま(おこさま)」と呼んで大切に飼い、衣笠明神をまつっている。

 

 

 過去に自分で作ったサイトよりやや手直しして転載。未来社『日本の民話8 上州・甲斐編』より要約しつつ抜き書きしたものです。

 類話:金色姫(茨城県)など

 

*追記

 動画を作りましたので、よろしければどうぞ。あんまりおしゃべりが上手ではないんですけど。いちおう絵も自分で描いております。

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